2025年8月のWindowsアップデートを適用したPCで、NDIを使った配信に深刻な不具合が起きています。
OBS StudioやNDI Toolsを使っている方から、「カクつく」「音が遅れる」「映像が止まる」などの報告が相次ぎ、配信業務に大きな支障が出ています。
原因は、KB5063878やKB5063709といったセキュリティ更新プログラムで、NDIの通信方式である「RUDP」との相性が悪く、予期せぬ干渉が起こっている可能性が高いのです。
この記事では、問題の症状、原因、対策方法、通信プロトコルの基礎までをわかりやすく解説します。
Windowsアップデート後にNDI配信で発生している不具合とは?

最近のWindows更新以降、NDI配信で問題が出ているという声が目立っています。
OBS StudioやNDI Toolsで報告されている主な症状
Windowsアップデート後、OBS StudioやNDI Toolsを使った配信で、映像がスムーズに表示されなくなるトラブルが報告されています。
具体的には、配信映像が断続的に止まる「スタッター」や、映像と音声がズレる「AV同期ズレ」、全体的な「ラグ(遅延)」などが目立っています。
これらはNDI(Network Device Interface)を用いたネットワーク越しの配信で特に多く、配信品質の低下につながるため、注意が必要です。
「カクつき」「遅延」「同期ズレ」が多発している理由
このような症状が多発している背景には、Windowsのセキュリティ更新プログラムとNDIの通信仕様の相性が関係しています。
NDIは高品質なリアルタイム映像伝送を実現する技術ですが、通信が微妙に乱れるだけでも大きな影響が出やすい仕組みです。
とくに「RUDP」と呼ばれるプロトコルを利用している場合、更新後のシステムとの間で予期せぬパケットロスやバッファ処理の遅延が発生していると考えられます。
Display Capture利用時に顕著に現れる不具合の傾向
配信ソースに「Display Capture(画面の録画)」を使用している環境では、不具合がさらに顕著になる傾向があります。
画面全体をキャプチャするこの機能は、GPU負荷やメモリ転送の影響を強く受けやすいため、Windows更新による処理系統の変更が大きく影響します。
また、同時にエンコード処理を行っている場合、音声との同期ミスや映像のコマ落ちが頻繁に発生する要因となります。
原因はセキュリティ更新「KB5063878」「KB5063709」
不具合の発生は、特定のセキュリティ更新プログラムが原因と見られています。
Windows 11/10それぞれに影響する更新プログラムとは?
問題となっているのは、2025年8月13日に配信された「KB5063878(Windows 11向け)」および「KB5063709(Windows 10向け)」のセキュリティ更新です。
どちらも脆弱性の修正を目的としたアップデートですが、NDIを使用する配信環境においては、この更新によってネットワーク伝送やグラフィック描画に思わぬ影響を及ぼしています。
更新内容がNDIと干渉する技術的背景
NDIの通信は、高速かつ高精度なリアルタイム処理を行う設計となっており、Windowsのセキュリティレイヤーによる干渉がその処理に影響を与える可能性があります。
特に、更新によって変更されたドライバやネットワークフィルタが、NDIのデータストリームに遅延やパケット損失を引き起こしているケースが考えられます。
また、Windows Defenderのリアルタイムスキャンやシステムリソースの制御方法にも変更があったと見られ、配信アプリケーションと競合する場面も増えています。
Microsoftが現在進めている調査状況
Microsoftは現時点で公式にNDI配信の不具合を認めているわけではありませんが、フォーラムなどでは複数の報告が上がっており、調査が進行中とされています。
NDI公式も同様の問題に対して注意喚起を行っており、互換性改善のためのパッチ提供が期待されています。
ただし、現時点では修正を含む新たな更新プログラムのリリース予定は示されておらず、ユーザー自身での設定変更やアップデートの回避が求められます。
RUDP通信の仕様と不具合発生の関係

NDI配信の不具合には、RUDPという通信方式が深く関係しています。
通信プロトコル「RUDP」とは?
RUDP(Reliable UDP)は、UDPの速度とTCPの信頼性を併せ持つプロトコルです。
NDIでは、低遅延かつ安定したストリーム伝送を実現するためにRUDPが採用されています。
しかし、信頼性を確保するために再送処理やエラーチェックが多く組み込まれており、これがOSの通信制御と干渉する原因にもなっています。
特にセキュリティアップデート後のWindowsでは、この再送処理に時間がかかり、映像や音声が途切れる現象が発生しています。
なぜRUDPでのみトラブルが発生するのか
RUDPはリアルタイム性を保ちながら、信頼性も担保するという性質を持ちますが、それゆえにOS側の制御とぶつかりやすい構造となっています。
今回のWindows更新によって、ネットワークパケットの優先順位やキュー制御のアルゴリズムに変更が入った可能性があり、それがRUDPの処理を著しく遅らせていると考えられます。
結果として、NDIのフレーム処理が間に合わず、映像や音声のカクつき、タイムラグが発生しています。
TCP・UDP(Legacy)への切り替えが有効な理由
NDI公式が推奨しているように、RUDPからTCPまたはUDP(Legacy)に切り替えることで不具合を回避できるケースが多くあります。
TCPは再送制御がOS側で最適化されているため、更新の影響を受けにくい特徴があります。
UDP(Legacy)は旧来の非信頼性通信を利用しているため、余計な再送処理が省かれ、リアルタイム性が保たれやすくなります。
どちらもRUDPより安定動作する可能性が高いため、設定変更を検討する価値は十分にあります。
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NDI配信不具合を回避する2つの対処法
NDIの配信トラブルには、現時点で2つの有効な対処法があります。
方法①:NDI Access Managerで通信方式を切り替える手順
まず検討したいのが、NDI Access Managerを使って通信方式を変更する方法です。
NDIでは「RUDP」がデフォルトで設定されている場合がありますが、これを「TCP」または「UDP(Legacy)」に切り替えることで、通信の安定性が大きく改善されるケースがあります。
変更はNDI Toolsに含まれるAccess Managerから簡単に行え、設定変更だけで症状が軽減する例も多く報告されています。
特別なソフトの追加導入も必要ないため、リスクの少ない対応策といえます。
方法②:Windowsアップデートをアンインストールする方法とリスク
通信方式の切り替えで改善しない場合は、該当のWindowsアップデートを削除するという手段もあります。
KB5063878(Windows 11)またはKB5063709(Windows 10)をアンインストールすることで、元通りにNDIが動作するようになったという報告は複数あります。
ただし、これらはセキュリティ強化のための更新であるため、削除することで脆弱性が残る点には十分な注意が必要です。
業務で配信を行っている場合は、別のセキュリティ対策と併用することも検討されます。
各対処法のメリット・デメリット比較
NDI Access Managerでの通信方式の切り替えは、設定が簡単で再起動の必要もなく、安全性が高いのがメリットです。
一方で、根本的なOSの動作が影響している場合には完全な解決に至らないこともあります。
アップデートのアンインストールは即効性がありますが、システム全体のセキュリティに影響を与えるというリスクが伴います。
どちらの方法にも一長一短があるため、使用環境や配信の重要性に応じて適切に判断することが大切です。
実際のユーザーから寄せられた体験談

多くの配信者が、NDIの不具合に対してさまざまな試行錯誤を行っています。
Redditや掲示板での報告例まとめ
海外フォーラムやRedditでは、NDIが突然動かなくなったという投稿が急増しています。
「OBSが止まる」「音声だけ届いて映像が真っ黒」など、多くの配信者が似たような問題に直面しています。
これらの投稿には、同様の症状を抱えるユーザー同士が情報交換を行っており、対処方法についての実践的な意見が多く寄せられています。
SNSや掲示板は、リアルタイムの対策を知る手がかりとして非常に参考になります。
設定変更後の改善事例
実際にNDI Access Managerで通信方式を「TCP」に切り替えたところ、ラグが完全になくなったという報告もあります。
また、「UDP(Legacy)」に設定することで、タイムラグやカクつきが解消されたという声も確認されています。
これらの事例からも、設定の見直しだけで多くの問題が解決する可能性が高いことが分かります。
設定変更の影響範囲は限定的であるため、試してみる価値は十分にあります。
更新プログラム削除による改善報告の信頼性
中には、問題の更新プログラム(KB5063878またはKB5063709)を削除することで、NDIが元通りにスムーズに動作するようになったという報告もあります。
とくにOBS Studioを使って配信しているユーザーからは、「アンインストール後に一切の遅延がなくなった」との声が多数見られます。
ただし、こうした改善事例の裏にはセキュリティリスクもあるため、他の防御策と併用するなどの工夫も必要になります。
今後の見通しと推奨されるNDI設定
今後のアップデート次第では、不具合が解消される可能性もあります。
NDI公式の見解と回避策ガイド
NDI公式は、今回の不具合について公式ドキュメントで注意喚起を行っています。
特に通信方式の切り替えについては明確に推奨されており、RUDP以外の接続方式にすることで安定した動作が見込めると明記されています。
また、NDI Toolsを使った設定方法の具体的な手順も公開されており、公式のガイドラインに従うことで、初心者でも安全にトラブルを回避できるようになっています。
Microsoftからの正式修正はいつ出る?
Microsoftは現在、本件に関して正式な修正パッチを発表していません。
ただ、これまでの事例から見ても、多数のユーザー報告がある不具合に関しては後日修正プログラムが出される可能性が高いです。
特にプロフェッショナル用途でNDIを利用している企業からの声も多いため、マイクロソフト側が動くのは時間の問題とも言われています。
定期的に更新情報を確認する姿勢が重要です。
安定した配信環境を維持するためにできること
現時点では、NDI通信方式の見直しと、OSアップデートの管理が安定配信のカギになります。
また、バックアップ用の配信構成や、OBS以外のツールでの代替案を準備しておくことも有効です。
加えて、セキュリティリスクに備えた対策ソフトの強化や、ファイアウォール設定の最適化も合わせて行うことで、トラブル発生時の影響を最小限に抑えることが可能になります。
まとめ
今回のNDI配信における不具合は、Windowsのセキュリティ更新「KB5063878」および「KB5063709」が原因である可能性が高く、多くのユーザーがOBS StudioやNDI Toolsで問題に直面しています。
通信方式をRUDPからTCPやUDP(Legacy)に切り替えることで改善される事例が多く見られますが、根本的な解決にはMicrosoftの対応が不可欠です。
今後のアップデートを注視しながら、自身の環境に合った設定を見直すことが、安定した配信を維持するポイントとなります。