2025年10月以降に配信されたWindows11の更新プログラムを適用すると、WSL(Windows Subsystem for Linux)でVPNが正常に動作しなくなる不具合が報告されています。
特にKB5072033などの更新を適用した環境では、Cisco Secure ClientやOpenVPNを利用するユーザーを中心に接続トラブルが発生中です。
この記事では、Windows11 25H2 / 24H2環境で確認されているWSLのVPN不具合について、原因・影響範囲・回避策をわかりやすく整理しました。
同じ問題に悩んでいる方は、ここで紹介する暫定対応を実践することで安定した環境に戻せる可能性があります。
Windows11 WSL VPN 不具合とは?

ここでは、現在発生しているWindows11環境におけるWSLとVPN接続の不具合について、概要と背景を整理して解説します。
問題の発生時期や影響を受ける環境、そしてどのような現象が報告されているのかを確認しておきましょう。
いつから発生しているのか
この不具合は、2025年10月29日に配信されたプレビュー更新プログラムKB5067036以降の環境で確認されています。
その後、11月・12月の定例更新でも同様の挙動が報告されており、最新のWindows11 25H2 / 24H2環境でも引き続き影響が続いています。
特に12月10日に配信されたKB5072033適用後の環境では、企業ネットワークを利用するユーザーを中心に障害報告が増えています。
どのような環境で影響が出るのか
不具合が確認されているのは、Windows Subsystem for Linux(WSL)のネットワークモードを「Mirrored」に設定している環境です。
このモードでは、ホストOSと同一ネットワークを共有する仕組みのため、VPN経由の通信制御が複雑になります。
結果として、VPNトンネルを経由する通信がWSL側で遮断されたり、DNS解決が機能しなくなるケースが発生しています。
| 環境構成 | 影響の有無 |
|---|---|
| ネットワークモード:Mirrored | 不具合発生 |
| ネットワークモード:NAT(既定) | 影響なし |
| ホストOSからのVPN通信 | 影響なし |
発生している症状の具体例
主な症状として、VPN接続後にWSL環境内からインターネットへアクセスできなくなる現象が確認されています。
また、企業ネットワーク内のリソース(例:社内Gitリポジトリ、ファイルサーバーなど)へのアクセスも制限されます。
一方で、Windows側のアプリケーションは正常に通信できるため、問題がWSL特有のネットワーク経路に限定されていることが分かります。
つまり、この不具合はVPNとWSLのネットワーク仮想化層の相互作用によって発生している可能性が高いと考えられます。
不具合の原因と影響範囲
続いて、この不具合の技術的な背景と、どのような範囲で影響が及ぶのかを詳しく見ていきます。
原因の理解は、暫定的な回避策を考えるうえでも重要です。
MirroredネットワークモードとVPNの関係
WSL2では、ネットワークモードとして「Mirrored」と「NAT」を選択できます。
Mirroredモードはホストと同じネットワークを共有するため、VPNとの親和性が高いように見えますが、実際にはVPNの仮想アダプターとの経路競合が発生します。
特にVPNクライアントが独自のルーティングルールを設定するタイプの場合、WSL仮想NICとの通信経路が遮断されることがあります。
| VPNアダプタータイプ | Mirroredモードでの挙動 |
|---|---|
| 標準的なWindows VPN(IKEv2等) | 動作安定 |
| Cisco Secure Client / OpenVPN | 通信不安定・接続不能 |
影響を受けるVPNクライアントの種類
Microsoftの報告によると、現時点で問題が確認されているのは主に以下のクライアントです。
- Cisco Secure Client(旧AnyConnect)
- OpenVPN
- DirectAccess環境下のVPN
特に、企業・法人環境で多用されるVPNソリューションに影響が集中しています。
一方で、個人ユーザーが利用する一般的なVPNサービスでは発生頻度が低く、Microsoftも一般ユーザーへの影響は限定的とコメントしています。
影響を受けにくい環境や構成
不具合を回避できる構成として、WSLのネットワークモードを「NAT(既定)」に戻す方法があります。
また、VPN接続をホストOS側ではなく、仮想マシンやコンテナ内で独立させる構成も一時的な対策として有効です。
このほか、VPNアプリをWindowsの既定機能(IKEv2/IPsec)に切り替えることで通信が安定するケースも報告されています。
つまり、現時点ではWSLとVPNの同時利用を避け、必要に応じて設定を切り替えるのが最善策といえます。
対象OSと該当する更新プログラム一覧

ここでは、今回のWSL VPN不具合が確認されている対象OSと、関連する更新プログラム(KB番号)を整理します。
自分の環境が該当するかどうかを確認することで、影響範囲を正確に把握できます。
Windows11 25H2 / 24H2の対象バージョン
この不具合は、Windows11の25H2および24H2の両方で確認されています。
いずれのバージョンも2025年秋以降に配信された更新を適用している場合に影響が生じる可能性があります。
Microsoftの公式ドキュメントによれば、Home・Proエディションは影響を受けにくいものの、企業ネットワークでVPNを利用するEnterprise・Educationエディションが特に注意すべき対象です。
| OSエディション | 影響の可能性 |
|---|---|
| Windows11 Home / Pro | 低 |
| Windows11 Enterprise / Education | 高 |
問題を含む更新プログラム(KB番号)一覧
現在、Microsoftが影響を確認している更新プログラムは以下の通りです。
| 更新プログラム名 | 配信日 | 影響 |
|---|---|---|
| KB5072033 | 2025年12月10日 | 影響あり |
| KB5070311 | 2025年12月2日 | 影響あり |
| KB5068861 | 2025年11月12日 | 影響あり |
| KB5067036 | 2025年10月29日 | 影響あり |
これらの更新を適用した後にVPN通信が不安定になった場合、WSLのネットワーク設定が関連している可能性が高いです。
特にKB5072033を適用した環境で問題が再発するケースが多数報告されています。
企業・法人利用者が注意すべきポイント
企業ネットワークでは、VPNを経由してActive Directoryや社内リソースへ接続する構成が一般的です。
そのため、今回のようなWSL側のネットワーク不具合は、開発・運用環境全体に影響を与える可能性があります。
また、DirectAccessやSCCM(System Center Configuration Manager)など、Windowsの管理機能にも波及するおそれがあります。
一時的にVPN経由の開発を停止し、ホスト環境で作業を行う方針を検討するのも現実的な対処です。
現時点での対処方法と回避策
ここでは、Microsoftの最新情報をもとに、現時点で実施できる対処法や暫定的な回避策を紹介します。
公式修正はまだ提供されていませんが、設定変更で一部の環境では改善が確認されています。
Microsoftの公式見解
Microsoftは2025年12月時点でこの問題を認識しており、「調査中」としています。
同社によると、WSLのMirroredネットワーク機能とVPNクライアント間での競合が原因である可能性が高いとしています。
現段階では修正パッチやレジストリ変更による恒久的な解決策は提示されていません。
今後のWindows Updateで修正が配信される見込みがあるため、自動更新は無効化しないことが推奨されています。
一時的な回避手順(推奨される設定変更)
一部の開発者コミュニティでは、以下の手順で不具合を回避できたという報告があります。
- WSLのネットワークモードを「NAT」に戻す
- VPN接続中はWSLを停止し、作業はホスト側で行う
- VPN接続の種類を変更(例:OpenVPN → IKEv2)
特にネットワークモードの変更は効果が高く、設定ファイル(.wslconfig)に以下を追記します。
[network]
mode = NAT
この変更後、WSLを再起動するとVPN経由の通信が回復するケースがあります。
ただし、企業ポリシーで設定変更が制限されている場合は、システム管理者に確認しましょう。
| 設定項目 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|
| network.mode | NAT | 通信安定性向上 |
| VPN種別 | Windows標準VPN | 競合回避 |
今後の修正予定とアップデートへの備え方
Microsoftは、この不具合に対する修正を「今後のセキュリティ更新またはプレビューリリースで提供予定」としています。
そのため、管理者は更新チャネル(Windows Update for BusinessやIntune管理)を活用し、テスト環境での検証を行うことが推奨されます。
また、既知の不具合に関するページ(Known Issue Rollback)に同問題が掲載される可能性もあるため、公式情報を定期的にチェックしておきましょう。
WSL利用者は、今後の累積更新に注目しつつ、暫定回避策を併用するのが現実的です。
まとめ:WSLユーザーは何をすべきか
ここまで、Windows11環境で発生しているWSLとVPN接続に関する不具合を解説してきました。
最後に、現時点でWSLユーザーや企業のシステム管理者が取るべき対応を整理してまとめます。
今後のアップデート監視の重要性
この不具合はMicrosoftが正式に認識しており、今後の更新で修正される見込みがあります。
そのため、ユーザーはWindows Updateの配信内容や、Known Issue Rollback(既知の問題のロールバック)情報を定期的に確認することが大切です。
特に、企業環境では自動更新を一時停止しているケースも多いため、手動での更新確認が必要になる場合もあります。
| 推奨アクション | 目的 |
|---|---|
| Windows Updateを定期的に確認 | 修正版の適用漏れ防止 |
| Known Issue情報を監視 | 既知の不具合や回避策の早期把握 |
情報を追い続けることが、最も安全かつ確実な対策になります。
システム管理者が取るべき対応ステップ
企業・組織においてWSLを利用している場合、管理者は次のような対応を検討するとよいでしょう。
- VPN利用ポリシーを一時的に見直す
- WSLネットワークモードを「NAT」に変更する手順を周知
- VPNクライアントの種類(Cisco Secure Client / OpenVPN)を再評価
- 影響が出る更新プログラムを適用する前に検証環境で確認
これらを組織内で共有することで、VPN障害による開発業務の停止を防ぐことができます。
| 対応項目 | 効果 |
|---|---|
| ネットワークモード変更 | VPN競合の回避 |
| 検証環境の運用 | 更新前のリスク評価 |
| 情報共有体制の構築 | 障害発生時の対応速度向上 |
「設定の見直し+情報の共有」が、現時点で最も実践的なリスク対策です。
最終的には、Microsoftが提供する修正アップデートを適用することで根本的に問題は解消される見込みです。
それまでは、VPN経由での作業を最小限に抑え、安定した開発環境を維持することを意識しましょう。
