2025年4月、MicrosoftはWindows 11向けの新たなプレビューアップデート「KB5055629」をリリースしました。
本アップデートでは、日常的なPC操作に直結するエクスプローラーの改善や、ナレーター機能の強化といった利便性の向上が図られています。
また、モバイル連携やウィジェットの刷新といったUI関連の進化、さらに各種バグ修正やセキュリティ面での強化も盛り込まれており、一般ユーザーから開発者まで広い層にとって注目度の高い内容となっています。
今回はこのKB5055629アップデートについて、具体的な新機能や既知の問題、対象ユーザーへの影響などを体系的に解説していきます。
KB5055629とは?Windows 11向けプレビューアップデートの概要

KB5055629は、Windows 11の機能強化と不具合修正を目的としたプレビュー版のアップデートです。
今回のアップデートの目的と特徴
本アップデートは、Windows 11のユーザーエクスペリエンス向上を目的に設計されています。
エクスプローラーやナレーター機能などの改善をはじめ、Microsoft 365との連携性向上、セキュリティポリシーの最適化などが盛り込まれています。
特に企業ユーザーにとっては、Active Directory環境での操作性や管理性が強化されるなど、業務効率化の観点からも見逃せない内容です。
プレビュー版の注意点と対象ユーザー
プレビュー版は正式リリース前の評価版であり、すべての環境で安定性が保証されているわけではありません。
主にIT管理者や開発者、テクニカルユーザー向けに配布されており、既知の不具合や一部機能の仕様変更が含まれていることもあります。
業務利用中のPCなどには慎重な適用が求められ、必要に応じてテスト環境での検証が推奨されます。
KB5055629で追加された主な新機能
今回のアップデートでは、UIやクラウド連携、アクセシビリティの分野で多くの改善が実施されました。
エクスプローラーのMicrosoft 365連携強化
エクスプローラーは今回のアップデートで大幅に機能が強化され、Microsoft 365との連携性が一段と向上しました。
特にキュレーションビューの導入により、最近使用したOfficeドキュメントやOneDrive上のファイルに素早くアクセスできるようになりました。
これにより、作業の中断や情報の検索にかかる時間が短縮され、業務効率が向上します。
クラウドベースのファイル管理が日常業務の中核を占めるユーザーにとっては非常に有益な改良です。
ナレーターの「音声要約」機能追加でアクセシビリティ向上
ナレーター機能には新たに「音声要約」機能が追加され、視覚的に情報取得が難しいユーザーの支援体制が強化されました。
この機能により、ナレーターが読み上げた内容をテキストとして記録し、後から確認・コピーできるようになります。
ユーザーは簡単なショートカット操作で要点を素早く振り返ることができ、学習支援や会議メモとしての活用も期待されます。
アクセシビリティ対応の強化は、多様なニーズに応える重要な一歩といえるでしょう。
スマートフォン連携の強化|スタートメニューから直接操作可能に
スタートメニューからモバイル連携機能へ直接アクセスできるようになり、PCとスマートフォンの連携がさらに円滑になりました。
これにより、SMSの送受信、写真の閲覧、通話機能へのアクセスが迅速化され、デバイス間の操作感が統一されます。
従来の「スマホ連携」アプリに加え、シームレスなクロスデバイス体験が実現されることで、ハイブリッドワークの環境でも柔軟な業務遂行が可能になります。
ウィジェットの拡張とWeb開発者向け新機能
ウィジェットはインタラクティブ性が強化され、Web開発者が自作コンテンツを複数のウィジェットサーフェスに展開できるようになりました。
これにより、天気やニュース、株価などの情報を自動更新するカスタムウィジェットの作成が可能になります。
また、ロック画面ウィジェットのサポートも拡張され、日常的な情報確認がより手軽になりました。
開発者にとってはUI拡張の可能性が広がるアップデートです。
デスクトップアイコンの表示ロジックが刷新
デスクトップに表示されるアプリのアイコンがより直感的で見やすくなるよう、表示ロジックに調整が入りました。
アクセントカラーのバックプレートが廃止され、アプリアイコン本来のデザインが強調される形となっています。
特に視認性が重要となる高解像度ディスプレイ環境では、こうした小規模な改善が作業効率に大きく影響します。
システム全体のUI一貫性も向上し、ユーザビリティの向上が期待されます。
共有シートの画像編集機能が進化
共有シートでは画像共有時に簡易編集機能が追加され、トリミングや回転、フィルターの適用といった処理が可能になりました。
これまでは外部アプリを経由していた作業が共有操作の中で完結するため、操作ステップが大幅に削減されます。
特にスクリーンショットの素早い加工や、SNS用の写真修正が効率化されるため、日常的に画像共有を行うユーザーにとっては大きなメリットです。
ユーザー中心設計に基づく改善といえるでしょう。
解消されたバグと不具合一覧

本アップデートでは、多様な環境下で発生していた複数の不具合が修正されています。
スタートメニューとタスクバーの不具合修正
スタートメニューでは、テキストサイズの変更時に特定ボタンが表示されない問題が解消されました。
また、タッチ操作におけるピン留めアプリの一覧表示不具合も改善されています。
タスクバーでは、アラビア語やヘブライ語といった右から左に表示される言語環境において、キー操作による選択移動の不具合が修正されました。
これにより、多言語環境でも一貫した操作性が実現され、ユーザーの利便性が向上しています。
SMBプロトコル関連のファイルアクセス遅延問題
SMB(Server Message Block)プロトコルに関する処理の最適化により、特定のファイル共有環境で発生していたExcelファイルの読み込み遅延が解消されました。
アクセスベースの列挙が有効なネットワーク共有において、リンクの多いブックを開く際のレスポンスが大幅に改善されています。
特にファイルサーバーを業務で活用する企業ユーザーにとっては、業務効率の向上につながる修正です。
サインインエラーとWindows Helloの対応改善
USBxHCIコントローラーとIntel Core Ultra 200VシリーズのUSBポートに接続されたデバイスで、Windows Helloの顔認証が正常に動作しない不具合が修正されました。
また、バージョン23H2から24H2へのアップグレード時に、ESS(拡張サインインセキュリティ)の設定が引き継がれない問題も解消されています。
これにより、安全かつスムーズな認証体験が提供されるようになりました。
Xboxコントローラーの安定性向上
Xbox Elite Wireless Controllerの特定ファームウェアに起因する入力デバイスの動作不良が修正されました。
キーボード認識が失敗し、デバイスマネージャーにエラー表示がされる問題も同時に解消されています。
さらに、開発者向けには、ドライバー検証ツールの応答停止に関する問題にも対応されており、Windowsハードウェア品質ラボでのテストにも好影響を与えています。
これらの改善は、ゲームプレイヤーと開発者双方に恩恵をもたらします。
Windowsカーネルのセキュリティ強化|脆弱ドライバーブロックリスト更新
Windowsカーネルの「DriverSiPolicy.p7b」ファイルが更新され、BYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)攻撃に利用される可能性のあるドライバーが新たにブロック対象に加えられました。
これにより、システム内部への不正アクセスリスクが低減され、エンドポイントのセキュリティがさらに強化されます。
セキュリティ対策が重要視される中、このようなカーネルレベルの防御機能は非常に意義のある対応です。
KB5055629の既知の問題と注意点
本アップデートにも一部環境で影響が出る既知の問題が存在し、事前確認が重要です。
Citrix環境で発生するインストール失敗の可能性
KB5055629適用時、Citrix Session Recording Agent(SRA)バージョン2411がインストールされている環境では、Windowsセキュリティ更新プログラムが正常にインストールされない事象が報告されています。
アップデートの途中で「変更を元に戻しています」というエラーが発生し、再起動後も適用が完了しないケースが確認されています。
これらの影響は一部法人環境に限定されるものの、注意が必要です。
対象となるCitrixバージョンと回避策について
問題が確認されているのは、Citrix SRA バージョン2411を導入している端末です。
このバージョンでは、KB5055629のセキュリティパッチと競合するプロセスが存在しており、Microsoftのサーバーとの整合性チェックで異常が発生します。
Citrix社は現在、仮想デスクトップ基盤(VDI)向けの一時的な回避策を提示しており、更新前にSRAのアンインストールまたは旧バージョンへのロールバックが推奨されています。
MicrosoftとCitrixの今後の対応予定
MicrosoftとCitrixは共同でこの問題の恒久的な修正に向けて作業を進めており、近く追加の技術情報やパッチが公開される予定です。
公式ドキュメントやサポートページに最新情報が掲載され次第、適宜確認することが重要です。
今後のリリースでは、互換性向上に向けた変更が加えられると見られ、企業ユーザーにとっては中長期的な安定運用に寄与するアップデートとなる見込みです。
サービススタック更新プログラム(KB5056849)について
KB5056849は、Windows Updateの基盤となるサービススタックに関する重要な更新です。
SSUとは?役割と重要性
サービススタック更新プログラム(SSU)は、Windows OSの更新機構そのものを安定させるための基礎コンポーネントです。
SSUが適切に動作していない場合、他の累積的更新プログラム(LCU)が正しくインストールされない可能性があります。
今回提供されたKB5056849では、Windows 11のサービススタックにおける信頼性向上が図られており、今後のアップデート成功率に直接影響を与える重要な修正が含まれています。
適用すべきかどうかの判断ポイント
SSUは通常、LCUと一緒に自動適用されるため、手動操作は不要な場合が多いですが、適用前の事前確認は推奨されます。
特に、企業のIT管理者やアップデートに失敗経験のあるユーザーは、SSUの適用状況をチェックしておくと、予期せぬインストールエラーを防止できます。
安定性と互換性を重視するユーザーにとって、SSUは見落とせない重要なコンポーネントといえるでしょう。
まとめ
KB5055629は、Windows 11の利便性と安定性を大きく引き上げる内容が盛り込まれたアップデートです。
エクスプローラーの操作性向上やモバイル連携の強化、ナレーターの新機能といった目に見える改善に加え、セキュリティ強化や複数の不具合修正も実施されました。
一方で、Citrix環境における既知の問題など注意点もあるため、利用環境に応じた適用判断が求められます。