2025年5月に配信されたWindows 10向けの累積更新プログラムKB5058379は、セキュリティの強化だけでなく、Linux環境や企業向け運用に関する重要な改善も含まれています。
今回の更新では、既知の不具合やバグ修正、脆弱性の対応が盛り込まれており、特にCitrix環境でのトラブルやWSL2の仮想GPU機能に関する問題が話題となっています。
本記事では、KB5058379の概要から、技術的な修正点、注意すべき不具合とその対処方法までを網羅的に解説します。
KB5058379とは?2025年5月の重要アップデート

Windows 10のサポート終了が近づく中、KB5058379はその過程で極めて重要な位置づけのアップデートです。
配信日と対象ビルド番号の確認
KB5058379は2025年5月13日にMicrosoftより配信されました。
対象はOSビルド19044.5854および19045.5854です。
これらはWindows 10 バージョン21H2および22H2の最新構成に該当します。
今回の更新は、Servicing Stack Update(SSU)とLatest Cumulative Update(LCU)を一体化して提供しており、更新の安定性と信頼性が向上しています。
企業ネットワーク環境でもスムーズな適用が期待されています。
セキュリティだけじゃない累積更新の中身
この累積更新プログラムには、セキュリティ修正に加えて、品質向上を目的とした機能改善やシステムパフォーマンスの最適化が含まれています。
特に、イベントビューアに関するエラーの解消や、仮想GPUに関するLinux互換性の向上は、開発者やシステム管理者にとって価値の高い改善点です。
また、Secure Boot関連の処理強化も行われており、デュアルブート環境での安定性向上が図られています。
地味だけど効果的!主なバグ修正内容
一見小さな修正でも、長期的な運用の中でユーザーに大きな影響を与えるポイントが多く含まれています。
WSL2の仮想GPU問題の修正
Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)を利用したGPUの仮想化処理において、大文字と小文字の区別に起因する不具合が報告されていました。
この問題により、LinuxベースのAI処理やGPUアクセラレーションを活用するアプリケーションで起動失敗が発生することがありました。
KB5058379では、この文字列処理の誤りが修正され、OpenCLやCUDAなどを利用する開発環境において、安定した動作が確認されています。
SgrmBroker.exeによるイベントビューアエラーの改善
2025年1月14日以降のアップデート以降、SgrmBroker.exeに関連したイベントID 7023のエラーがイベントビューアに頻繁に記録される事象が発生していました。
これにより、ログ監視システムに不要なアラートが出力され、システム管理者の作業効率を阻害する懸念が指摘されていました。
今回の更新では、このログ出力の異常が修正され、イベントログが本来の診断用途に集中できるよう最適化されています。
セキュリティとLinuxユーザー向けの改善点

デュアルブートやセキュリティ強化環境において、影響の大きい改善が多数含まれていることが特徴です。
脆弱ドライバー対策の強化(BYOVDブロック)
KB5058379では、「Windows Kernel Vulnerable Driver Blocklist」の更新が実施され、Bring Your Own Vulnerable Driver(BYOVD)攻撃への防御機能が強化されました。
このリストは、悪用が確認されたレガシードライバーをブロックすることで、カーネルレベルの不正アクセスを未然に防ぎます。
特に、ゼロデイ脆弱性の悪用リスクが高まる中、企業のセキュリティポリシーにとって重要な強化施策と言えるでしょう。
SBATとLinux EFIの互換性改善
Secure Boot Advanced Targeting(SBAT)とLinuxのExtensible Firmware Interface(EFI)に関して、起動互換性を向上させる修正が行われました。
これまでは、SBATの検出処理に不備があることで、WindowsとLinuxのデュアルブート環境でLinux側が起動できないトラブルが報告されていました。
今回の改善により、UEFI環境でのマルチOS構成でもスムーズなブートシーケンスが確保され、Linux利用者にとって安心して更新できる内容となっています。
知っておきたい既知の問題と対象環境
KB5058379には一部の環境で正常にインストールできない既知の問題が存在します。
特に法人環境では注意が必要です。
Citrix Session Recording Agentとの相性不具合
Citrix Session Recording Agent(SRA)バージョン2411がインストールされたWindows 10環境において、KB5058379の適用に失敗する事例が報告されています。
この不具合は、SRAの一部コンポーネントとWindows Updateの処理が競合することに起因しています。
企業のVDI環境や監査ログ運用にSRAを利用している場合は、事前にバージョンを確認する必要があります。
エラーの症状とメッセージの内容
この不具合が発生すると、アップデート直後の再起動時に「Something didn’t go as planned. No need to worry – undoing changes」というエラーメッセージが表示されます。
一見するとインストール成功に見えても、再起動時に更新内容が巻き戻されてしまうため、実質的にアップデートが適用されません。
この症状はログに記録されにくいため、管理者は注意深く挙動を確認する必要があります。
修正版(バージョン2503以降)での対処推奨
Citrixはこの問題に対応したSession Recording Agentの修正版、バージョン2503をすでにリリースしています。
このバージョン以降では、Windows Updateとの競合が解消されており、KB5058379の適用も正常に行えます。
アップデート前にSRAのバージョンを確認し、2411を使用している場合は速やかにアップデートを実施することが推奨されます。
KB5058379でアップデートが止まった時の対処法
更新プログラムが進まない場合、複数の要因が絡んでいる可能性があります。
冷静に原因を切り分けましょう。
よくある原因別チェックリスト
Windows Updateが途中で止まる主な要因には、システムファイルの破損、ディスクの空き容量不足、セキュリティソフトによる通信遮断、ネットワーク接続の不安定さなどがあります。
これらはWindows OSの内部処理や外部環境に影響するため、いずれか1つでも該当すれば更新が失敗することがあります。
特に更新失敗が繰り返される場合は、ハードウェアの状態も含めて総合的に確認する必要があります。
効果的なトラブルシューティング手順
まずはWindows Updateのトラブルシューティングツールを実行し、自動修復が可能かを確認しましょう。
次に、セキュリティソフトを一時的に無効にし、再度アップデートを試みる方法があります。
また、コマンドプロンプトでの「コンポーネントリセット」操作も効果的です。
具体的には、net stop wuauserv
や ren SoftwareDistribution
といったコマンドを使い、更新関連の一時ファイルを初期化することで、更新プロセスの再構築が可能となります。
古いPCは要注意?スペック不足の可能性も
Windows 10の動作要件は比較的緩やかですが、KB5058379のような大規模更新ではCPUやメモリへの負荷が高まります。
特に、HDD搭載の旧型PCやメモリが4GB未満のモデルでは、インストールに時間がかかるか、処理が途中で停止する可能性があります。
SSDや最新のプロセッサを搭載した機種であれば、更新処理もスムーズに進みます。
今後のWindows 11移行も見据え、必要に応じてハードウェアの更新を検討するのが賢明です。
まとめ
KB5058379は、Windows 10のセキュリティ維持と安定性向上に不可欠な更新プログラムです。
多くの不具合修正や、Linux環境との互換性改善が含まれており、特に技術系ユーザーや法人利用者にとっては見逃せない内容となっています。
一方で、Citrix SRAとの競合など特定環境での既知の問題も報告されており、注意深い運用が求められます。
万一アップデートが進まない場合は、原因を整理し、段階的なトラブルシューティングを実施することが重要です。
必要に応じてPCの性能見直しも視野に入れましょう。